速報 2「難民問題と現地情報 ―難民キャンプでの状況―」


オーストリア、ニッケルスドルフの難民支援施設を訪れた後、ウィーン西駅の様子を見に行きました。
そこでも多くの難民たちが、ドイツのミュンヘンへ向かう電車を待っていました。

しかし、特に混乱した様子はなく、電車が動いている状態に難民たちが安心したのか、またはボランティアとして働く人々の功績が大きいのかもしれませんが、駅構内は非常に落ち着いた状態でした。

私たちがオーストリアで取材中もずっと、難民たちがギリシャに上陸し、マケドニア、セルビアを経てハンガリー国内へ続々と入国するというニュースが流れていました。

では、実際はどうなのか、現在の状況を知るために、私たちはウィーンからブダペストへ戻り、その足でセルビアとの国境地帯に向かいました。

ハンガリーとセルビアとの国境に設置された鉄線と鉄柵

ハンガリーとセルビアとの国境に設置された鉄線と鉄柵

現在、ハンガリーとセルビアとの国境には175kmもの有刺鉄線が設置されています。

取材した9月6日の時点ではまだ鉄柵が建設途中だったため、鉄柵のない場所から、取材中も何千人という難民が押し寄せてきました。

鉄柵が未完成の場所を通り、歩いてハンガリーに入国する難民たち

鉄柵が未完成の場所を通り、歩いてハンガリーに入国する難民たち

国境付近に住む農家の方々にお話しを聞いていた時に、農家の女性が

「私のトウモロコシ 畑の中に多くの難民たちがいる」

と訴えてきました。
一部の難民たちは、ハンガリー での難民登録を逃れるために警察から逃げ、トウモロコシ畑の中で夜まで息を殺して潜んでいたのです。

この写真左のトウモロコシ畑の中に何十人もの難民が潜んでいました

この写真左のトウモロコシ畑の中に何十人もの難民が潜んでいました

※ハンガリーで難民登録をした場合、他のEU諸国で受け入れを拒まれると強制的にハンガリーへ引き戻されます。

逃げるのに必死な難民たち、必死で追いかけるハンガリー警察。

その双方にも、そして、取材を続ける報道関係者にも、畑という財産を守りたい農家の人々の悲痛な叫びはまるで届きません。

作物が無惨に踏み荒らされ、治安面でも大きな不安を抱く農家の人々の声なき声に、一体どれだけの人が耳を傾けることができたといえるでしょうか?

ここにも「私たちにできること」があると確信しました。

その後、セルビアとの国境近くにあるルスケという町の難民キャンプを訪れましたが、その現場で見たものはやはりとても過酷な環境でした。

キャンプ場にも収容人数に限りがあります。

更に、英語を話せない難民の登録にはかなり手続きの時間を要していました。
何百人もの難民たちがキャンプの外側で、何もない土の上に座り込み手続きの順番を待っていたのです。
過酷な状況に置かれているのはハンガリー警察も同じですが、その状況を多数のメディア関係者がハンガリーの警察は非人道的だと一斉に非難しました。
日本の方々に考えていただきたいことは、マスコミが報道することだけが真実なのかということです。
実際に、一人の警察官が、
「僕たちは昨日から休むことなくずっとここで立っている。警察の苦しみも少し理解してほしい。」
と呟いた言葉に私は衝撃を受け、見逃している課題に気付かされました。
彼の声に耳を貸さなければ、おそらくこの視点で議論することはなかったでしょう。

休むことなく警備を続けるハンガリー警察

休むことなく警備を続けるハンガリー警察

表面上の嘆きを映し出すのは容易であり、本当に大事なことは、もの凄い数の難民がハンガリーに押し寄せ、EU協定にある難民申請を拒み、それでもドイツを目指すこの状況に対し、どのように解決すべきなのか糸口を見つけることにあるはずです。

なぜ、シリア人を始めとする難民たちは、祖国を捨てなければならないのか。

なぜ、受け入れ側との衝突が生まれるのか。

EU全体、いいえ、世界全体に訪れた、この難民問題を取り巻く「なぜ」を知ろうと努力することがこれからの時代、必要不可欠なのではないでしょうか。

本日9月16日の東駅地下の壁に残されていた難民からのメッセージ

本日9月16日の東駅地下の壁に残されていた難民からのメッセージ


 

取材・文・撮影:フィノマガジン編集部 武田友里


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大阪生まれの大阪育ち。神戸大学で人間行動学を専攻。中学校・高等学校1種免許(保健体育)、小学校専修免許状を所持し、子どものスポーツ教育に従事。その後、ハンガリーへ渡りブダペスト メトロポリタン大学大学院でメディアコミュニケーション学を学ぶ。現在もブダペスト在住。FinoMagazinライターの傍ら、ロケーションコーディネーター、ウエディングフォトプランナーとしても活動中。ハンガリー情報はお任せあれ。英語、ドイツ語もOK!! 日本拳法で全国制覇の経験もあり、心身の強さには自信アリ。知力・体力を磨いて、世界の現場から日本の教育にアイデアを届けることをモットーに、様々な分野で執筆に励む。

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