ハンガリーの日本語学習者に学ぶ、日本の強み 23. Japán nyelvi Szónokverseny


2016年3月19日(土)、ハンガリーの首都ブダペストにあるギムナジウム※( Deák téri Evangélikus Gimunázium ) で、第23回日本語スピーチコンテストが開催されました。

※ハンガリーのギムナジウムとは普通高等学校を意味します。普通教育と同時に大学受験資格取得のための教育が行われ、大学受験の準備が行われる教育機関。

今回、フィノマガジンでは、日本から9000km以上も遠く離れたハンガリーで日本語を真剣に勉強するハンガリー人の学生さん達にインタビューを敢行。
取材を通して見えてきた“ハンガリー人が考える日本”について、リアルに深堀していきます!!


知られざる親日国ハンガリー

  1. 第23回日本語スピーチコンテスト最優秀賞 Tóth Noémi ( トート・ノエミ ) さん/ テーマ「かわる」
  2. 高校生以下の部優勝 Kovács Fanny Sára ( コヴァーチ・ファンニ・シャーラ ) さん/ テーマ「犬夜叉」
  3. 大学一般初中級の部優勝 Józsa Nikolett Andrea ( ヨージャ・ニコレット・アンドレア ) さん/ テーマ「神々の住む場所」
  4. 大学一般上級の部優勝 Pór Andrea ( ポール・アンドレア ) さん/ テーマ「時を超えた別世界からの響き」

年に1回、ハンガリーで長きに渡り開催されている日本語スピーチコンテスト。
その内容は、高校生以下の部、大学一般初中級の部、大学一般上級の部の3つの部門に分かれています。

本コンテストへの応募条件は、日本語を学習する在ハンガリーの満8歳以上の方、そして日本での滞在経験が6カ月以下であること。
今年もまた、応募条件をクリアし選抜された各部門の候補者の方々が、素晴らしい日本語スピーチを披露してくれました。


“ 和食 ” や “ 手漉和紙技術 ” がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、いまや “ 日本 ” は世界でますます注目を集めています。
以前、2015 年 10 月21 日掲載『知られざる親日国ハンガリー』という記事でもご紹介しましたが、このハンガリーにも“ 日本ブーム ”が到来し、筋金入りの “ 日本好き ”という方も少なくありません。

ハンガリー人の彼らにとって、日本という異国「文化」はとても魅力的に映るようですね。
ただ、彼らがいくら日本文化を好きになっても、“日本語”を学習しようという心境にまで至らないのが一般的ではないでしょうか?

オーストリア、スロベニア、スロヴァキア、ウクライナ、ルーマニア、セルビア、クロアチアの7 カ国に囲まれた内陸国であるハンガリー。
また、ハンガリーはEU加盟国なので、母国語ハンガリー語をはじめ、近隣諸国の言語に加えてEU諸国の言語(英語、ドイツ語、フランス語等々)をも操る方が結構いらっしゃいます。
それらの国々の言葉と比べると、ハンガリー人が自国から遠く離れた日本の言葉を使う機会は滅多になく、また、必然性もほとんどありません。

本スピーチコンテストの応募条件を見ても分かるように、その候補者の多くは、日本への渡航経験がほぼありませんし、ハンガリーは親日国と言われるものの、実際にハンガリーから日本へ渡航される方も、まだまだ少ないのが現状です。

それでもなぜ、ハンガリーで使用頻度の少ない日本語を彼らは学び続けるのか?
そこまでハンガリーの若者たちを突き動かす日本の魅力とは一体何なのか?

その真相を探るべく、第23回日本語スピーチコンテスト最優秀賞に輝いた、高校生以下の部に出場のTóth Noémi (トート・ノエミ) さん、 大学一般上級の部で優勝されたPór Andrea ( ポール・アンドレア )さんに、コンテスト終了後、取材させていただきました。


最優秀賞 Tóth Noémi (トート・ノエミ) さんが語る、世界観を変えた日本とは

©2016FinoMagazin 高校生以下の部出場、最優秀賞受賞 トート・ノエミさん

©2016FinoMagazin 高校生以下の部出場、最優秀賞受賞 トート・ノエミさん

「みなさんはどうして生きていますか?」

スピーチの冒頭で、聴衆に問いかける彼女。

人とのコミュニケーションが苦手で、友達と呼べる友達が一人しかいなかった彼女が、“ かわる ” きっかけとなったのは、ある日本の文化でした。
トートさんの日本語スピーチテーマ “ かわる ” から、彼女の目に映った日本人の姿を探っていきます。


Q. トートさんを “ かえた ” 日本文化とはなんですか。そして、ご自身がどのようにかわったのですか?


(トート・ノエミさん)

10歳の時、学校へ行く道で、「毎日学校へ行く、勉強する、食べる、寝る」そんな毎日の生活の目的はなんなのか考えました。
人が苦手だった私は、考え方もネガティブで、人の気持ちも全然わかりませんでした。
当時は、話せる子も一人しかいなかったんです。

ある日、クラスメイトが私に「アニメを知ってる?」と聞いてきたのがきっかけで、アニメをみるようになりました。

初めは、画の美しさに魅了されて見始めたのですが、アニメの中には、私が生きる現実世界にも存在する深いストーリーが組み込まれていることに気づいたんです。

「もし私が、この主人公のように、世界を別の角度で見てみたら…もし私が、他人にも心を開こうと努力してみたら…ひょっとしたら私のことを受け入れてくれる人に出会えるかもしれない。自分のことも好きになれるかもしれない。」
と思うようになりました。

最近では、昔ほど頻繁にはアニメを見ていませんが、様々な日本のアニメを見て得た、一つひとつの気づきが、私に行動力を与え、私の世界観に大きく影響していきました。
今では友達もたくさんいますよ。

 


Q. アニメが、トートさんにとっての転機だったんですね。最近ではあまりアニメを見ていないようですが、では、なぜ今でも真剣に日本語を学んでいるんでしょうか?


(トート・ノエミさん)

アニメは、日本の文化や日本の人々をとても反映していて、日本社会も垣間見ることができます。
日本のアニメの中で、特に印象的だったのは、キャラクターの表情に笑顔が多いということです。

そして、よく相手を励ますシーンも見られます。
実際に、私の日本語の先生も「大丈夫!!」とよく私を元気づけてくれるんです。

こうして、アニメの中で描かれている日本の人々の内面性や習慣を発見するうちに、“ 日本人 ” に興味を持つようになりました。
「日本のことをもっと知りたい」という思いが強くなり、日本語の勉強を始めたんです。
今は、将来のために一生懸命、日本語を勉強しています。


Q. 日本人に魅力を感じ、日本語を勉強しているトートさんの将来の夢は何ですか?


(トート・ノエミさん)

今は高校生で、卒業しても日本語の勉強を続けたいので、大学は日本語学科へ進もうかなと考えています。

その後、私は、自分の日本語能力を活かして、ガイドになりたいです。
どこでガイドをしているかはわからないけれど、日本人にハンガリーをもっと紹介できたらいいなと願っています。


大学一般上級の部優勝 Pór Andrea ( ポール・アンドレア ) さんが音楽から考える、日本人の姿とは

 

©2016FinoMagazin 大学一般上級の部 ポール・アンドレアさん

©2016FinoMagazin 大学一般上級の部 ポール・アンドレアさん

 

音楽一家に生まれたポールさんが、偶然出会った日本の伝統音楽「雅楽の世界」。
西洋音楽の教育を受けてきた彼女にとって、衝撃的な出会いだったそうです。
雅楽の世界にのめり込んでいった彼女は、雅楽の文化が日本語や日本人の習慣に反映していることをスピーチの中で語ってくれました。


Q. スピーチでは、雅楽への熱い思いを語っていましたが、普段からよく雅楽は聴きますか?


(ポール・アンドレアさん)

聴きますよ!
雅楽の音色に耳を澄ませて聴き入ったりもしますが、最近では、雅楽を聴きながら勉強することもありますね。
でも残念なことに、まだ雅楽の生演奏を聴いたことがないんです。

以前、日本人演奏家たちによるハンガリー公演があったそうですが、当時は、まだ雅楽自体を知らなかったので、聴き逃してしまいました。

ハンガリーでまた雅楽の演奏会があれば、今度はぜひ聴きに行きたいですし、日本で生演奏を聴いてみたいというのも私の一つの夢なので、今はそのチャンスを掴むために日本語の勉強を頑張っています。

 


Q. では、ポールさんが日本語を学び続けるモチベーションとなっているは、日本へ雅楽を聴きに行きたいという目標なんですか?


(ポール・アンドレアさん)

それも一つのモチベーションですが、大学の卒業研究で“ 雅楽” をテーマにしているので、研究のために日本へ留学することが今の一番の目標です。
そして、将来は、日本語通訳者になりたいと考えていますが、何よりも日本人の方々と働きたいという思いが強いので、今、日本語を頑張っています。


Q.  筆者は、ハンガリーで、日本人は働きすぎなどネガティブな意見も耳にすることがあるのですが、ポールさんはなぜ、日本人と働きたいのでしょうか?


(ポール・アンドレアさん)

日本人の国民性と自分の性格に似ている部分があるからです。
例えば、伝統音楽にはヨーロッパと日本の民族性が表れていると思います。

西洋音楽には穏やかな中にも激しい一面が表れていたりと、喜怒哀楽が豊かな性格が表れているのに対して、雅楽では、侍っぽさと言いますか、日本人の揺るがない落ち着きが反映されているようですね。

ハンガリー人の私から見ると、日本人は「落ち着いて考えてから行動する」方が多いように感じます。
そして、謙虚であり、物事に対する熱心さがあります。
ハンガリーを含め、ヨーロッパ諸国の人々に日本人が勝っている部分ですね。

もちろん、日本の社会は非常に厳格だというのも聞いていますが、所属先への忠誠心や同僚たちとのチームワークはすごいと思っています。
そして、言われた業務をこなすだけでなく、誰かのために一生懸命働くおもてなしの心も素敵ですね。
「心から働く」というのが、私の考え方なので、そういった意味でも日本人の方々と社会のために働けたら嬉しいです。

 


ハンガリーと日本の架け橋に

©2016FinoMagazin 写真左Tóth Noémi/写真右 Pór Andrea

©2016FinoMagazin 写真左Tóth Noémi/写真右 Pór Andrea

日本から遠く離れたハンガリーで、自身の夢や目標に向かって、彼女達は今日も日本語を学び続けています。
ハンガリーの学生の方々が語ってくれた日本人の強み、そして、「笑顔」と「他を思いやる心」の発見。
そんな(日本語)学習意欲が高まった理由について、読者の皆様は想像することができたでしょうか?

グローバル化していく社会だからこそ、彼女たちのように、相手の強みを認め学び合う姿勢を大事にしていきたいですね。
フィノマガジンでは、引き続き、ハンガリー国内で奮闘され、ご活躍される方々をこれからもレポートしていきますので、お楽しみに♪


第23回日本語スピーチコンテスト結果


【最優秀賞】

高校生以下の部出場 Tóth Noémi ( トート・ノエミ ) さん/ テーマ「かわる」


【高校生以下の部】

優勝 Kovács Fanny Sára ( コヴァーチ・ファンニ・シャーラ ) さん/ テーマ「犬夜叉」

準優勝 Hujber Sándor (フイベル・シャーンドル)さん/ テーマ「尾道でおもしろかった体験」

3位 Tatai Eszter Natália (タタイ・エステル・ナターリア) / テーマ「やきゅう」


【大学一般初中級の部】

優勝 Józsa Nikolett Andrea ( ヨージャ・ニコレット・アンドレア ) さん/ テーマ「神々の住む場所」

準優勝 Schäffer Dorottya ( シェッフェル・ドロッチャ ) さん/ テーマ「私の大切な趣味・日本の手話」

3位 Bellák Erzsébet ( ベッラーク・エルヂェーベト ) さん/ テーマ「友情について」


【大学一般上級の部】

優勝 Pór Andrea ( ポール・アンドレア ) さん/ テーマ「時を超えた別世界からの響き」

準優勝 Kiss Hajnalka ( キッシュ・ハイナルカ ) さん/ テーマ「ちょう “ クール ” な場所」

3位 Rudolf Dániel ( ルドロフ・ダーニエル ) さん/ テーマ「北からのメッセージ」


Interview :  Tóth Noémi (トート・ノエミ) さん / Pór Andrea ( ポール・アンドレア )さん

取材・撮影・文/武田友里 ( Takeda Yuri )

Interview conducted and written by Takeda Yuri

 

 


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大阪生まれの大阪育ち。神戸大学で人間行動学を専攻。中学校・高等学校1種免許(保健体育)、小学校専修免許状を所持し、子どものスポーツ教育に従事。その後、ハンガリーへ渡りブダペスト メトロポリタン大学大学院でメディアコミュニケーション学を学ぶ。現在もブダペスト在住。FinoMagazinライターの傍ら、ロケーションコーディネーター、ウエディングフォトプランナーとしても活動中。ハンガリー情報はお任せあれ。英語、ドイツ語もOK!! 日本拳法で全国制覇の経験もあり、心身の強さには自信アリ。知力・体力を磨いて、世界の現場から日本の教育にアイデアを届けることをモットーに、様々な分野で執筆に励む。

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