防災センターで災害を学ぶ、常に防災の意識を Disaster Prevention Practice



いつどこで地震が起きてもおかしくない日本という国。

2011年の東日本大震災で経験した【震度4】が、筆者の人生で最も大きな地震の体験です。
フィノマガジン読者の皆さまも、日本へ訪れたいという方がいらっしゃると思います。

これから日本へ観光、ショートステイ、民泊などを考えているハンガリーの方々。
また、すでに日本にお住まいの方や日本語学校、大学などに通い始めた方々へ、地震について少しでも知っていただこうと、筆者は防災センターで震度7を実際に疑似体験してきました。

実はその大地震・疑似体験をレポートし、その詳細をお伝えしようと準備をしていた矢先に、熊本の大地震が起きてしまったのです。
今日も依然として、熊本では余震が何度となく続いているとのこと。
お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆さまにお悔やみを申し上げます。
また長引く余震や不自由な避難生活を強いられ不安の中、被災されている方々に心よりお見舞い申し上げます。


 

日本に来られる訪日外国人旅行者数

b1

神奈川総合防災センターでこれから防災について学ぶ園児のみなさん


2003年4月1日に発足し、観光庁が行っている【ビジット・ジャパン】。
それは、海外から日本へ観光に来ていただくというキャンペーンです。

同キャンペーンを実施する以前の訪日外国人旅行者数は約500万人でしたが、実施以降、2015年には約1973万7000人にまで海外からの観光客が増加しました。
今日の日本には、さまざまな国の在留外国人の方が約200万人もいらっしゃるとのこと。
日本を訪れ、滞在される外国の方が増加するのは、国際交流がいっそう活発になるイメージでとても喜ばしいことです。

外国人の方には、日本での安全で楽しい旅の思い出をお土産に持って帰っていただきたいものですが、日本は世界でも有数の地震大国、「防災」についてもぜひ知っていただきたいと思います。


東日本大震災時の動画

b3

消防用具発達の歴史コーナーでは日本のこれまでの消防の歴史を学ぶことができます。


2011年、東日本大震災の際に来日していた外国人旅行者や日本在住外国人の方々。
筆者達は疑似体験前に、彼らが都内のホテル、空港、観光地またはその他の施設、さらに自宅で地震に遭われた当時の様子を、ネット上の動画でいくつか確認しました。

現在、大きな施設では日本語の後に、英語、中国語のアナウンスがあるようです。
しかし、東日本大震災当時の動画を見ると、スタッフから彼らへの避難指示は日本語のみが多く、「英語でアナウンスしてほしい」と外国人の方々がつぶやく動画も見つけました。
(あくまでも動画だけで確認したので、実際は日本語以外の言語で対応していた施設もあると思います。)

おそらく、母国で経験したことのない大地震に遭遇した訪日外国人旅行者たち。
彼らの心の中は当時、恐怖や不安な思いに支配されながらも必死に踏ん張っていたのでしょうが、動画を見ると言葉がわからず呆然としている様子。

外国人の中でも本国で地震があり、防災訓練を経験されて、被災時の対処方法をご存知の方もいらっしゃいました。
ですが、まったく地震が発生しない国からいらした方々は、机の下へもぐるという発想がなかったのです。
動画に映る彼らは初めての地震に戸惑い、ただただ過ぎ去るのを待っているよう見えました。


日ごろの防災訓練の大切さ

実は今、東京都内で外国人向けの防災訓練が定期的に行われているのをご存知でしょうか?
国際交流協会などでは在住外国人に向けて体験型の防災訓練への参加を呼びかけており、その取り組みは徐々に全国へと広がっているようです。

民泊のオーナーの方やホストファミリーの方!
海外からの旅行者や留学生の方へ、“防災”についてお話をされていらっしゃいますか?

特に地震のない国から来られた方には、防災センターなどで地震の疑似体験をして防災意識を高めたり、避難方法や集合場所、家族や友人・知人との連絡方法を確認しあうことはとても大切です。
岩手県釜石では以前から小学1年生〜中学3年生を対象に、「自分の命は自分で守る力」「自分で決断し行動できる子供」を育む防災教育を行ってきた結果、東日本大震災が発生した当時、釜石に住む約99.8%の小中学生が助かったという「釜石の奇跡」が実際にありました。

岩手県の釜石が防災教育に取り組む以前、子どもたちは津波があっても逃げないという考えでしたが、防災訓練の結果、子ども達自身の判断で自発的に避難させるまでに意識を変え、実際に彼らは自分の命を守り他者の命も守ることができたのです。

当時の報道である小学生が、

『“釜石の奇跡”ではなく“釜石の実績”だ』

と言っていたのがとても印象的でした。

人は災害に直面した際、「自分は大丈夫」、「前も大丈夫だった」と考え、すぐに「逃げる」という判断にまで至らないようです。
各都道府県・市町村によって災害の状況、特徴は異なりますし、また、想定外の事態も多く、さらに外国人の方が日本で被災された場合、文化の違いや言葉の壁の問題もあり、容易なことは1つもないでしょう。

しかし、そんな災害を常に意識して、どう避難するか、また、それぞれの地域についてよく知り、防災訓練を繰り返すことが必要なことではないかと筆者は感じました。


3つの地震を体験

b7

地震体験コーナーでみんなで震度7を体験、小さな身体で必死にテーブルにしがみついています。かなり激しく揺れているのですが写真ではなかなかお伝えできません。画面が少し暗いのは停電が起きているという想定です。

今回、神奈川県総合防災センターのご協力により、1923年の関東大震災(約2分)、1995年の阪神・淡路大震災(約1分)、さらに、2011年の東日本大震災(約1分30秒)の3通りの揺れを続けて体験することができました。
疑似体験では実際の地震を短く編集し、横揺れの地震となっています。
(こちらのセンターでは通常、このうちのどれか1つの体験となります。)
部屋もキッチンという設定でコンロの火を消し、湯沸かし器も切り、避難経路を確保するため扉を開け椅子で固定、時間内に終えないと操作ができなくなります。
扉を開けることができなくなった、つまり、それは、扉の枠が歪んだということを意味するので、実際の災害状況に近い“疑似体験”ができました。
ただし、実際の地震の時はまず、揺れがおさまるまで身を守ることがなにより大切です。

関東大震災、東日本大震災

筆者はこの2つの地震の状況を疑似体験しましたが、最初に震度1~3の弱い揺れから始まるので、火を止めたりドアを開けたりと余裕がありました。
その後、強い揺れが襲い、一瞬計測される震度7の揺れでは身体が横に振られたため、テーブルの脚に掴まっていないと転がりそうになります。
強い揺れがしばらく続き、だんだんとおさまっていきますが、しばらくして、また急に強い揺れが襲ってきました。

阪神・淡路大震災

この地震の疑似体験では、いきなり強い横揺れが始まってドアを開けることや、火を止める余裕もなく、テーブルの下にもぐるのがやっとでした。

その後は揺れが徐々におさまっていきます。。

この3つの疑似体験で筆者が一番怖いと感じたのは、『阪神・淡路大震災』の疑似体験でした。
阪神・淡路大震災直後の情報では、家具が飛んできたという表現を使っていたのですが、筆者は家具が倒れるのではなく飛んでくるというのはどういうことなのだろうと、疑似体験をする前はまるで想像が尽きませんでした。

いざ、疑似体験がスタートすると実際の揺れが人も家具もドンと突き上げられ、その後は激しい揺れで家具が飛んでくる状態。

その状況を身をもって経験してやっと認識することができました。

この体験コーナーに設置されているテーブルはそれなりに重いものでしたが、激しい揺れが起こると簡単にずれてしまいます。
関東大震災、東日本大震災のように、いったん揺れがおさまっても再度大きな揺れが襲う地震では、揺れがおさまったからといって安心してすぐに動いてはいけないこともわかりました。
常に想定外なことが起きることを念頭に、そのときどういった判断をするのか、日ごろから「自分の頭で考え判断する」ことはとても重要だと、身をもって感じることができたのです。


消火、煙避難体験

b8

迷路のような煙避難体験、暗がりの中、煙が立ち込めているというだけで不安になります。


都心で多い地震後のビル火災、この煙避難体験の際は、さながらビルの中にいるようでした。
人々はハンカチを持って口や鼻などを覆い、身体を90cmより下になるよう避難誘導灯を確認しながら歩かなければなりません。
疑似体験の空間では、人の叫び声やガラスの割れる音などが聞こえ、いくつも扉がありました。

そんな目の前にある扉を開けて行き止まりや障害物があれば引き返し、同じような扉がいくつもあるため、お恥ずかしながら筆者は道に迷ってしまいました。
これは防災訓練であり疑似体験と頭で分かっているものの、実際に体験してみると正直かなり焦りましたね。

ところで皆様は、火災で最も怖いのは何だと思いますか?

きっと、ご存知の方が多いと思いますが、答えは『煙』です。

煙や熱などには、上に上にと上がる性質があります。
人間は煙による一酸化炭素中毒に陥ると死に至ることも。
できれば、水分を含んだ布類などを鼻と口にあてること、さらに30cm以下まで身体を下げるのが理想です。


b2

消火体験コーナーで、訓練用消火器を使用して画面に映るストーブの火に向かって噴射します。コツは火の根元を狙うこと。筆者も体験してみましたが根元にあたっておらず、消火を失敗してしまいました。

消火体験コーナーで、訓練用消火器を使用して画面に映るストーブの火に向かって噴射します。

 

今まで消化器を触ったことがないという方も多いのではないでしょうか?

こういった機会ですので、少し消化器について触れておきますね。

消火体験コーナーで、筆者は実際に『消火器』を使い、画面に映る炎に向けて噴射を行いました。

消火のコツは火の根元を狙うことだったのですが、なかなか根元に当たらず、まさかの失敗…。

疑似体験とはいえ、消火作業は意外と難しいことを身を以て実感しました。
消火体験コーナーの他にも、神奈川県総合防災センターでは暴風雨体験など、さまざまなプログラムがありました。

ちなみに筆者が体験した暴風の風速は20mまでで、それ以上の風速30mはさすがに怖くて最後まで体験できませんでした。
風速30mになると息ができなくなるので、下を向いて呼吸をしなければなりません。

いつ目の前で起こるか分からない地震に備えて、皆様にもぜひ、防災体験をオススメしたいと思います。


余震、本震、2次災害

b5

神奈川防災センターでは災害時には神奈川県の活動拠点となり、臨時ヘリポートにもなります。非常用貯水槽も設置されています。

実際の地震は、最初に大きな揺れがあっても、それが本震とは限らず、その後さらに大きな揺れがくることもあるため、全く油断はできません。
山間部、沿岸部、平野部、都心部とさまざまな環境がある中、避難の対処法や注意点もさまざまで、どういった対処をするのか、どういった判断が必要なのかが違ってきます。
また、何度も続く余震で家屋やビル、橋などの倒壊、火事、津波が発生する可能性があるため、ご自身の居住地域や職場周辺の避難先など、自治体の防災マップや避難経路、また避難方法等の確認は必須です。
そういった最低限の情報をふまえながら、想定外の事態を大胆に推測して備えることも必要ではないかと思いました。


破壊は一瞬、長く続く避難生活

b4

災害用備蓄倉庫。災害時にはここの資機材が救援部隊に貸し出されます。

疑似体験はまだまだ続きます。

その後も3種類の揺れを続けて体験し、地震体験コーナーから出ると、今度は軽い船酔い状態で揺れている感覚が数分間も続きました。
実際の地震であれば何度も激しい余震が続き、そこへ季節によって寒暖の差や、雪・雨・強風と天候による人体への影響、空腹と睡眠不足、不安と恐怖、インフラの停止、本当にさまざまなことが重なって不自由な生活を余儀なくされるため、体調不良になることは容易に想像できます。

長引く避難生活は、改善すべき課題がまだまだたくさんあるようです。
今回、筆者は疑似体験をしてみて、不自由な避難生活をどのように過ごし、どのように健康を保てばよいのか、まだ被災する前にしっかりとできる限りのことを想定し、考えておくことが大切だと切に感じました。


体験を終えて

都内では防災センターに訪れる訪日外国人が増えているそうです。
日本の観光地と合わせてこういった施設に積極的に足を運んでいただけるというのは私たち日本人にとって、とても心強いですよね。

全国の防災センターは入館料や体験料が無料です。

地震体験の他にも、風水害、煙避難、消火などさまざまなプログラムがあり、疑似体験をすることができます。
(各施設によってプログラムが異なり、地震体験のない施設もあります。)
防災意識を身に着けるまで防災センターへ何度も足を運んだり、また、お子様がいらっしゃる方には、お子様が小さい頃からこのような無料の訓練施設を利用して『防災』体験を学んでみるのもオススメです。

2011年3月11日に発生した東日本大震災、そして、今回の熊本を中心とした大震災で、不自由かつプライベート空間のない、極限状態で避難生活をされている方が多くいらっしゃいます。

まだ、大地震を経験したことのない方には、その大変さ、辛さというものは、やはり想像がつかないでしょう。

今、自分たちに何ができるのか?

来たる大震災に備えていかに被害を最小に抑え、犠牲者を1人もださないという覚悟で努力を日々続け、特に防災意識の弱い方に対してどう注意喚起し危機意識を強めてもらえるのかも、地震大国日本にとっての大きな課題だと思いました。

東京オリンピックを控え、今後も多くの訪日外国人旅行者が予想されるこの日本で、本当の意味で海外の方に愛される日本になるには、災害に強い国になること、災害に強い国になれば他国の災害にも協力していけるのではないでしょうか。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」にはならないようにしたいものです。

日本政府観光局 平成28年熊本地震を受けた訪日外国人旅行者に対する情報発信について
熊本地震に関する情報発信、24時間の英語、中国語、韓国語、日本語による電話問合せ対応を実施。
緊急地震速報を配信するアプリ「Safety tips」を無料でダウンロード。


神奈川県総合防災センター
場所:〒243-0026 神奈川県厚木市下津古久280
問い合わせ電話番号:046-227-1700
開館時間:9:00~17:00 入館は16:30まで
体験コーナー利用は16:00までに入館
駐車場:無料 一般自動車60台、大型バス12台、福祉車両スペース3台
休館日:
毎週月曜日(祝日にあたる場合は翌日)
祝日の翌日(土曜日または日曜日の場合は開館)
その他詳細は神奈川県総合防災センターのサイトへ

参考サイト

総務省消防庁 全国防災センター

内閣府 外国人の支援・情報提供 災害対応資料集
(日本語を含む7か国語の防災マニュアルなど)

津波防災の現場から思うことのメモ

災害時に、なぜ人は逃げないのか

記事/写真 Hiromi 大海


author-avatar

神奈川在住、子供なしです。主人とうさぎと一緒に暮らしています。最近やたらと健康食にこだわりが。 10年かけて少しずつ太って気がついたときには・・・・。ファスティング・断食で10数キロ減量に成功。 なぜか日本に目覚め、日本文化、日本語、日本食を独学で勉強中です。

No Replies to "防災センターで災害を学ぶ、常に防災の意識を Disaster Prevention Practice"