映画『ルーム』は、生きる希望にあふれていた!



雨が続くこの季節。
久しぶりに青空が広がると、とても解放感がありますよね。
澄んだ空のもとでの初夏の空気は、なんとも清々しい!
今回は、そんな雨間の青空のような映画、『ルーム』のご紹介です。

 

最後に笑顔になれる。愛と誠実さと、希望の詰まった映画

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画像出典元: gaga/映画『ルーム 』公式サイト Room (C) A24

この物語の過酷な設定を知っている方の中には、「観ることにとても耐えられないのでは?」と不安な方もいらっしゃるかもしれません。

実際に私も、主人公たちの息も詰まるような状況に向き合うだけの心の体力があるかどうか心配でした。
しかし、観終わった今、私は自信をもって皆さんに『ルーム』をおすすめできます。
この映画は、雨の後の日差しのような爽やかで、希望にあふれた作品なのですから!

監督は、『FRANK フランク』などを撮ったレニー・アブラハムソン。
彼は、「僕が作った映画の中で、一番希望に満ちた映画かもしれない」(パンフレットより引用)と語っています。

 

過酷な環境下の母親と息子。物語は「ルーム」脱出から始まる

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画像出典元: gaga/映画『ルーム 』公式サイト Room (C) A24

 

この映画の主人公は、高校時代に誘拐されて7年間も監禁され続けた女性“ママ”と、そこで生まれ育った5歳の息子ジャック。
母子は、監禁生活を送っていた納屋(「ルーム」)から、知恵と勇気で脱出します。
自由となり一見すべてが解決したようにみえますが、この映画の本当のスタートは、ふたりが社会に戻ってから。

原作は、アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューの小説「部屋」で、ブッカー賞の最終候補作にもなった大ベストセラーです。
小説では、前半に監禁生活が描かれ(第1章「インサイド」)、脱出のハイライトを経て、後半に社会で成長していく姿(第2章「アウトサイド」)が、5歳のジャックの一人称で語られる2部構成でした。

映画もほぼこの流れとなっていますが、焦点となっているのは、ふたりが「ルーム」から脱出して後、社会の中で生きていく姿。
映画は、母子が自分の人生を取り戻す過程を描いた物語なのです。

 

「ルーム」を出てから、息子は世界を「発見」した

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画像出典元: gaga/映画『ルーム 』公式サイト Room (C) A24

 

監禁生活の中では、母子で1つの世界観を共有し、それでふたりの社会は完結していました。
しかし脱出してから環境は一転し、共有していた世界観は崩壊します。
母親“ママ”の社会と、息子ジャックの社会、それぞれ異なるのは当然のこと。
ふたりは各々の新しい人生になじみ、構築していく必要がありました。
そうした中、“ママ”とジャックは、対象的な心の変化を遂げていきます。

始めは新しい社会に戸惑っていても、次第に世界を「発見」し、どんどん自分の感性を膨らませていくジャック。
こどもの吸収力って、なんて美しく、そして逞しいのでしょうか。
新しい世界に目をキラキラさせて飛び込んでいき、先入観なしに「発見」を受け入れる姿は、みずみずしさにあふれています。

私たちは、全員がかつて「こども」でした。
誰もが「ジャックの時代」を経験してきたのです。
もう忘れてしまった当時の素直さを、ジャックの姿からふと思い出すかもしれません。
そして、子育て中の方や、子育てを経験された方にとっては、こどもたちの感受性の豊かさを再確認するのではないでしょうか。

 

「ルーム」を出てからの母親の葛藤と、周囲の戸惑い

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画像出典元: gaga/映画『ルーム 』公式サイト Room (C) A24

 

一方、母親“ママ”は、当初喜びにあふれていたものの、次第に世間の言葉や家族の接し方に傷つき、心を閉ざしていきます。

“ママ”の父親である“じいじ”は、犯罪者のこどもである孫(ジャック)を直視できません。
また、報道番組のリポーターは、常識や正論を前提に“ママ”にインタビューし、“ママ”を追い詰めてしまいます。

社会は決してふたりに対して悪意があるわけはありません。
ただ、周りの人もまた、弱さや未熟さを持っていたのです。

私たちはどうしても「自分」の価値観で相手を捉え、良かれと思って価値観の押し付けを「思いやり」だと勘違いしてしまいがちです。
しかし、本当の思いやりとは、「相手」への想像力なのではないでしょうか。
それは、「自分」はどうなのかという自分主体の想像力ではなく、「相手」ならばその状況はどういう意味なのかという、相手主体の想像力です。

“ママ”とジャックの監禁生活は、人々の想像を絶するものでした。
“ママ”の状況を想像することを拒否したのが“じいじ”で、それが彼の弱さだったのかもしれません。
逆に、ふたりの心を想像して温かく見守るのが、“ママ”の母親“ばあば”と、“ばあば”の新しいパートナー。
相手の状況を想像することは、苦しさもあるでしょうが、それが人として強さであり、成熟とも言えるでしょう。

 

誰もが経験する新しい世界との出会い。そして、誰もが経験する社会とのギャップ

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画像出典元: gaga/映画『ルーム 』公式サイト Room (C) A24

 

この作品は、第40回トロント国際映画祭で最高賞である観客賞を受賞しました。第88回アカデミー賞では、作品賞など4部門にノミネートされ、“ママ”役のブリー・ラーソンが、主演女優賞を受賞しています。

世界中の映画ファンが熱狂し、批評家が絶賛した理由は、設定が特殊であっても、この映画を「自分の物語」として観ることができたからではないでしょうか。
私たちは、小さい頃はもちろん、これからも世界を「発見」し続けます。
その過程では、世間や常識とのギャップで悩むことがあるかもしれません。
それでも私たちは、”ママ”やジャックのように逞しく生き続けることができるのです。

『ルーム』を観終わって映画館を出ると、きっと空を見上げたくなるはずです。
青い空、頬をなでる風、雑踏、カフェから漂うコーヒーの香り。
この社会に生まれ、たくさんの人と出会い、そしてこの世界で生きている喜びをきっと感じられることでしょう。

皆さん、映画で素晴らしい人生を!

 

【映画情報】
『ルーム』(原題『Room』)Copyrigt A24
監督:レニー・アブラハムソン。
出演:ブリー・ラーソン ジェイコブ・トレンブレイ
制作:アイルランド・カナダ(2015年)
公開:日本(2016年4月8日〜全国順次公開予定)
時間:118分
オフィシャルサイト:http://gaga.ne.jp/room/


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