映画『裸足の季節』、自由への一歩は私たちの物語でもある


こんにちは、フリーアナウンサーの石田芳恵です。
雨の多い季節ですが、日本では田植えの時期。
恵みの雨で植物がグングン成長していくシーズンです。

私たちも、人生の中でそんな生命力にあふれた時期があるかもしれません。
たとえば、少女から大人になる間。
今回は、トルコを舞台に、10代の5人姉妹の一瞬一瞬を捉えたみずみずしい映画、『裸足の季節』のご紹介です。

 

トルコの田舎町、美しい5人姉妹の物語

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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

 

舞台は北トルコの田舎町。
自由を求めてイスラムの古い慣習から抜け出そうとする5人姉妹の運命を、13歳の末っ子・ラーレの視点で描いています。

私はこの13歳のラーレの聡明さ、愛らしさ、そして勇気に魅了され、ラーレの視点を通していつの間にか、自分の視点で物語の中に入っていました。

美しい5人姉妹は、10年前に事故で両親を亡くしたため、祖母の家で叔父たちと暮らしています。
ある日、海辺で男子生徒とふざけている様子を隣人に見られ、それがイスラムの戒律に背いていると、祖母と叔父に強く叱られてしまいました。
そして、その日から一切の外出を禁じられ、1人ずつ大人たちが決めた結婚相手のもとへと嫁ぐことに。
そんな中、末っ子・ラーレは、運命を切り開くために密かにある計画を立てます。
そして、彼女のその勇気が物語を大きく動かすことになるのです。

 

トルコ生まれの女性監督による長編デビュー作

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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

 

監督は、トルコ出身の新人女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン。
海辺で男の子とふざけあったことを咎められるシーンは、監督の少女時代の経験も投影されているそうです。

美しい映像と巧みな構成力の映画は、デビュー作でありながらも世界各地の映画祭で高く評価され、第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。

この映画は、少女と大人の間にある生き生きとしたきらめきを、手持ちカメラでとても繊細に捉えています。
そして、ただ繊細なだけでなく、そこには監督の強い意志も感じられました。

さらに、スクリーンをはみ出すかのように光る、美しい映像。
ピカピカのタイル、カラフルな部屋の壁紙、ビビッドなファブリック、姉妹の派手な洋服、そして彼女たちのみずみずしい素肌、風になびく長い髪。
5人姉妹の好奇心や生命力を表現するかのように、映画は美しい色彩と躍動感であふれています。

 

止められない好奇心と衝動。まさに「野性の馬」

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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

 

小さな村の大人たちの常識では、女性は結婚して夫に仕えて家事に勤しむことこそ「女の幸せ」。
村の慣習は、若い女性に当然のように処女性を求めます。
大人たちの常識や古い慣習は、5人姉妹の持つ若さの力強さをねじ伏せようとし、一方、彼女たちは自由を手に入れようと奮闘します。
閉塞感がありながらも、仲の良い5人姉妹の会話や表情は、生命力にあふれ、とてもキラキラとしていました。

原題は『MUSTANG(ムスタング)』。
日本語で「野生の馬」という意味です。
これは5人姉妹を、野生の馬になぞらえたタイトルですね。
古い慣習や封建的な思想に飼い慣らされるのではなく、彼女たちが未来へ駆けていく姿を表しているようです。

 

そして、明けない夜はない

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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

 

クライマックスには、13歳の末娘ラーレが「野性の馬」そのものの行動力と突破力で、自らの手で未来の扉を開きます。
そこで映されるトルコの夜明けのシーンは息をのむ美しさ!

必ず、必ず、夜は明ける。
明けない夜は、ない。

朝がやってくるという希望に、私はただただ胸を打たれました。
自分で感じて考えて、歩き出したら、必ず夜が明け、そして美しい朝がやってくると、私たちは映画から再確認させてもらえるのです。

 

トルコの田舎町の話では終わらない。これは、私たちの物語であるということ

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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

 

この物語は、イスラム圏のトルコの田舎町の話では終わりません。
宗教や地域、年齢、男女差を越えた「私たちの物語」といえそうです。

枠からはみ出そうとするエネルギーは、古い慣習を踏襲する人たちにとって異質であり、脅威でもあるでしょう。
しかし、歴史を動かしてきたのは、そういった躍動感や好奇心、信念というエネルギーでした。

あなたが日常で感じる閉塞感やしがらみは、次のステージへのサインかもしれません。
誰もが自由な「野性の馬」です。
私たちは、枠をはみ出して、自分の力で外へ一歩踏み出すことができるのです。
必要なのは、ほんの少しの勇気。
あなたの心の底にある勇気が、映画のラーレの姿からきっと呼び起こされるはずです。

 

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(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

 

ところで、『裸足の季節』と聞いて、アイドル・松田聖子のデビュー曲を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは?
当時の聖子ちゃんの圧倒的な存在感、夏が似合う爽やかさとみずみずしさ、そしてその後の彼女の自立したアーティスト路線など、自由を求める5人姉妹とリンクするところがあるかもしれませんね。

皆さん、映画で素晴らしい人生を!

 

【映画情報】
『裸足の季節』(原題『Mustang』)
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演:ギュネシ・シェンソイ ドア・ドゥウシル
製作国:フランス・トルコ・ドイツ合作(2015年)
公開:シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他にて絶賛公開中!全国順次公開予定
時間:94分
オフィシャルサイト:http://www.bitters.co.jp/hadashi/

 

 


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