夏の風物詩といえば、花火大会やお盆祭り、海や川、キャンプなどの楽しい光景などなど実にさまざま。
そして、音楽ファンにとっての夏といえば、“フジロック”や“サマソニ”に代表される“夏フェス”で最も盛り上がるシーズンですよね。
ハンガリーでも日本と同じように、夏は国内各地で行われるさまざまな音楽フェスで盛り上がる季節。
なかでも特に有名なのが、ドナウ川に浮かぶ島全体がフェス会場に変身する【Sziget Fesztivál(スィゲト・フェスティバル)】です。
毎年、夏に開催される同フェスには、世界の超大物アーティストがゲスト出演することでも知られています。
今年の開催期間は8月10日〜16日の1週間。
そうです、1週間もあるので、毎夏、同フェスの会場内には無数のテントが現れます。
ハンガリー全土、ヨーロッパ、そして世界から熱い音楽ファンがテント一式を持参し、このブダペストにやってきます。
彼らは会場内で寝袋生活をしながら、お目当てのライブやアトラクションを満喫するのです。
ヨーロッパ最大の音楽祭でもあるスィゲト・フェスティバル。
今年はあの“リアーナ”が大トリでしたが、ハンガリー国内のニュースでは、出演時間の短さや、やや手抜きなパフォーマンスへのブーイングがかなり目立ちました。
Sziget Fesitvalの全容については、以前にフィノマガジンでご紹介していますので、そちらの記事をご覧ください。
本日ラスト!!Sziget Fesztivál ヨーロッパ最大規模の音楽フェスを見逃すな!!
第2の都市、デブレツェン開催の夏フェスが熱い!
ハンガリーで近年、最も勢いのある夏の音楽フェスティバル、それは『CAMPUS FESZTIVÁL 』(キャンパス・フェスティバル)という夏フェスです。
同フェスの開催地は、ハンガリー第二の都市として知られるデブレツェン(Debrecen)。
今年は、フィギュア・アイススケート世界選手権が開催された都市としても話題になりましたが、皆さんはご存知でしょうか?
そんなデブレツェンのシンボル的な存在なのが、広大なサッカー・スタジアム“Nagyerdei Stadium”と、ハンガリー最古の教育機関と言われるデブレツェン大学です。
今回、筆者が取材してきたCAMPUS FESZTIVÁL は、そのNagyerdei Stadiumと、デブレツェン大学キャンパスに隣接した大きな森全体が会場と化していました。
大学生が主体となったお祭りフェス “CAMPUS FESZTIVÁL ”
この夏フェスが普通のロック・フェスティバルと趣が異なるのは、大学生が主催者であるということ。
デブレツェン大学に通う学生たちが地元の企業と恊働して開催するため、“Campus”フェスティバルという名前なのだそうです。
今年はスィゲト・フェスティバルより先に、7月20〜7月24日の5日間開催された『CAMPUS FESZTIVÁL 』。
開催地であるデブレツェンの人々はもちろん、ハンガリー全土、さらに他のEU諸国からも音楽ファンが多数来場。
デブレツェンは全体的に閑静な都市ですが、この5日間は街全体がお祭り状態と化していました。
UKチャートNo,1ヒット連発の歌姫、“Jess Glynne”も出演!
そして、イギリスから同国チャートのNo.1ヒットを連発する歌姫、ジェス・グリン(Jess Glynne)が登場。
Jess Glynne (UK)
ビルボードやグラミー賞にもお詳しい洋楽ファンの方なら、ジェス・グリンの名をご存知かもしれませんね。
イギリス・ロンドン出身のシンガー・ソングライター、ジェス・グリン。
彼女がブレイクしたきっかけは、同じくUK出身の4人組で、クラシックをベースにした大人気エレクトロ・ユニット【Clean Bandit(クリーン・バンディット)】の存在。
クリーン・バンディットが2014年1月にリリースしたシングル曲でジェスはボーカルを務めたのですが、同曲が世界的に大ヒットしたからです。
Clean Bandit【Rather Be】ft. Jess Glynne
ジェス・グリンのハスキーでありながら透明感のある歌声が強く耳に残る、クリーン・バディットの大ヒットシングル“Rather Be”(ラザー・ビー)。
いま、移転問題で揺れている築地市場(日本)を舞台にした同曲のMVも、世界中の音楽ファンから大きな注目を集めました。
MVを視聴して彼らの存在を知った日本の洋楽ファンの方も多いはず。
Clean Bandit (UK)
Rather Beはイギリスのシングル・チャート4週連続1位を記録し、夏には全米ビルボードのシングル・チャートでもTop 10に!(10位)
そして、同曲は2015年の第57回グラミー賞で、「最優秀ダンス・レコーディング」も受賞しています。
今年のCAMPUS FESZTIVÁLには、そんな世界的に話題の歌姫&人気バンドも目玉として出演し、力強いパフォーマンスを披露。
同フェスでは、ミュージシャンはもちろん、さまざまなアーティストが総勢200組以上も出演していました!

Fotó: Mónus Anikó // Nagy Balázs // Vajda István
詳しくはキャンパス・フェスティバルの公式ホームページで、どのようなアーティストが出演したかチェックしてみてください。(英語表記もあります)
CAMPUS FESZTIVÁL official site
CAMPUS FESZTIVÁL 、スタジアム付近の様子
同フェス会場内の夜の風景。
写真に映る白い建物は、デブレツェンで一番大きなサッカー・スタジアム、“Nagyerdei Stadium”です。
会場内のいたるところに、遊び心あふれる空間が出現
スタジアム正面のエントランス付近には、フェス名と同じ、CAMPUSと、アルファベットが象られた巨大なオブジェが出現!
夜になると、それらのアルファベットにライトで映し出される模様(イラスト)がかなり個性的で目を引きました。
写真を取り忘れてしまったのですが、このエリアではミスト散布をしてくれる“涼しい”ドローンが頻繁に現れ、大活躍していたのが印象的です。
ハンガリーの人気ビール【Soproni】の特設会場
会場内はとても広大で、クラブのようなスペースもかなりあります。
スタジアムの近くに、ハンガリー国内で人気のビール【Soproni】が、同ビールを提供してくれる特設スペースがありました。
フィノマガジンでは以前、【Soproni】ショプロニについて紹介している記事があるので、ハンガリー国内で流通するご当地ビールにご興味のある方はそちらの記事もあわせてご覧ください。
ワインだけじゃない!ハンガリーの旨いご当地ビール
六本木のクラブシーンとあまり変わらない!?
その中に入ってみると、東京のクラブシーンとあまり変わらない光景が!
ハンガリーの若者も、お立ち台が好きなようですね!
Campus Festival
先ほど、CAMPUSのモニュメントが登場したスタジアムの中に入ると、この街で人気のクラブハウスがあります。
元々、クラブなのですが、今回は大手通信会社が提供するDJブース&ダンスフロアとなっていました。
周囲をよく見ると若い人達しかいない、というわけでもなく、中年のご夫婦もノリノリに踊っていたのが印象的でした。
野外のDJブースは、やや“おとなしめ”!?
森の中にある、幻想的なフードコート
ここは来場者たちがくつろぐフードコート。
夜になると、ワインやビールのブースに長い行列ができ、ビール一杯、手に入れるまで、少々時間がかかります。
このフードスペースでも、小さなライブステージが周囲にいくつかあるため、アーティスト達のライブ演奏をBGMにくつろぐ来場者で大変、賑わっていました。
街の人気スポットも、会場の一部に!
美しくライトアップされたこちらのタワー。
実はこの建物、地下1階がライブや演劇などを上演できる小さなホールとなっていて、上の階には人気のカフェ&バーがあるんです。
同フェスでは、こちらのカフェ&バー内も会場となっていました。
このタワーの隣には、落ち着いて演奏を聴きたいという大人の方にぴったりなステージが!
シャンソンやクラシック演奏のステージも
こちらのステージは観客席がだいぶ空いていましたが、ゆっくりと落ち着いて演奏や曲を聴きたい人にはちょうど良い空き具合。
筆者が足を運んだ時は、ステージの左側に映る女性歌手が、エディット・ピアフの名曲“愛の讃歌”をやや微妙な歌唱力で熱唱中でした。
余談ですが、やや毒舌だった筆者の亡き父は、エディット・ピアフの大ファンだったので、この場所に父がもしいたら、恐らくブーイングしていたでしょう。(個人的な感想を、失礼しました…)
ファミリーで楽しめるコーナーも!
こどもも大人も楽しく遊べるキッズコーナー
最初に入場料を購入するだけで、会場の中に入れば基本、一部のイベントスペースを除き、基本、飲食以外はどのエリアもすべて無料。
もちろん、キッズコーナーも無料で楽しめます。
フジロックやサマソニなど、日本の夏フェスの主な来場者は、どちらかと言うと“ロック好きな若い人たち”。
近年ではファミリーで訪れるケースも少しずつ増えているようですが、まだまだレアケースですよね。
ですがハンガリーでは、野外の音楽フェスティバル=夏恒例のファミリー行事といった感覚の人たちも多いのです。
デブレツェン大学の学生たちが企画・運営を担うCAMPUS FESZTIVÁLでは、小さなこども連れでも楽しめるようにさまざまな遊具が用意され、こどもたちが喜びそうなアトラクション・ブースもたくさんありました。
キッズブースの収益は、未来あるこどもたちへの投資に
車が大好きな男の子たちに大人気の“ミニ・レーシングカー”。
ハンドクラフトのコーナー。
ここでは、マグカップや布バッグに特性ペンで、こどもたちが夢中になって好きな絵を描いていました。
それらのマグやバッグは、もちろんお持ち帰りOK。
自分で仕上げた作品を嬉しそうに見つめる女の子の表情が印象的でした。
キッズコーナーにブースをそれぞれ出店していたのは、デブレツェンに拠点を置くNGO団体。
それらのNGO団体の中には、ハンガリーに暮らす“ロマ”族の人々への支援、そして、ハンガリー人とロマの人々の交流促進を目的として、来場者に“ジプシー”ミュージックやカルチャーを紹介し、体験できるブースがいくつもありました。
ハンガリーの夏フェスに見る、まっすぐなチャリティ精神
シリアなどから難民や移民が欧州にドッと押し寄せ、日本のニュースで連日、ハンガリーの駅構内に押し留められた彼らの抗議活動が連日報道されたのは、ちょうど一年前。
イギリスが国民投票の結果、EU離脱を決定したニュースも話題となりましたが、欧州全体に広がる移民・難民問題が背景にあることですよね。
日本の皆さんは“ジプシー”という言葉を聞くと、ダンサーや歌手などアーティストのイメージが強く、クールな印象を覚える人が多いのではないでしょうか?
筆者のような日本からの移住者はもちろん“移民”ですが、ハンガリーだけでなくヨーロッパ全土の長い歴史の中で何世紀にもわたって差別・排斥の対象となってきた移民の多くは、流浪の民である“ジプシー”=ロマ民族の人々です。
筆者がハンガリー=ヨーロッパの国で暮らして目の当たりにしたことのひとつに、彼らの多くはロマ族の人々を疎ましく思い、強い差別感情を抱いている根深い問題でした。
ヨーロッパ全体でロマ民族への差別が繰り返される背景やその理由はとても複雑なため、ジャーナリストでもない筆者が言及するのは控えます。
ただ、このデブレツェンで開催された注目の夏フェス“CAMPUS FESZTIVÁL”をレポートしたいと感じた理由は、自発的に参加される地元ボランティアのスタッフも多く、同フェスに来場するすべてのゲストに対して、温かく、好意的な雰囲気で満ちていたところです。
見晴らしも居心地も良い、デブレツェンの音楽フェスティバル
筆者が異国の地ハンガリーで子育て中ということもありますが、キッズコーナーでの光景にも、CAMPUS FESZTIVÁLはチャリティ精神と思いやりにあふれている音楽祭のように感じました。
写真はCAMPUS FESZTIVÁL会場の隣にある、“Nagyerdő, Csónakázó tó”という場所。
“Nagyerdő”はハンガリー語で“大きな森”、“Csónakázó tó”は“ボートを漕ぐ湖”という意味です。
噴水がとても美しいこの場所は本来、レンタルボートを楽しむための人工的な湖ですが、フェスの期間中は夜になると、この湖全体にショートムービーが映し出される演出となっていて、その光景がとても幻想的でした。
また、湖の上に気球が居心地良さそうに浮かぶ姿も、デブレツェンという都市の穏やかな素顔を映し出しているように思えました。
ハンガリー東部に位置する第二の都市“デブレツェン”。
今回は、この地で5日間開催された注目の夏フェス“CAMPUS FESZTIVÁL”をお届けしましたが、いかがでしたか?
ハンガリーの国土は北海道と同じくらいですが、この国の見どころや紹介したいスポットは尽きることがありません。
フィノマガジンではこれからも、ハンガリー国内で話題の場所やイベント、ニュースをご紹介していきます。
どうぞお楽しみに♪
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