高学歴アラサー女子が「逃げるは恥だが役立つ」を生んだハンガリーで見つめ直した人生観とは


「留学したい」、「海外に移住したい」、「仕事を辞めたい」、「転職したい」いろんな “ ~したい ” を抱いているけれどまだ踏み切れていない、そんな読者の方はいらっしゃいますか。

数年前、ハンガリーの大学院で学ぶことを決意したフィノマガジン現地ライターの筆者。
普段は旅行や暮らしに役立つ現地情報について執筆していますが、今回は趣向を変え、大学で学び直すことで変化していった人生観、ありのままのハンガリーの魅力についてお話したいと思います。


まさか、大学院で赤ちゃんと出会うとは

©2017FinoMagazin Photo by Yuri

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なぜいきなり赤ちゃんの写真なんだ?と思われましたよね。
筆者は結婚していますが、子どもはいません。
では、なぜ赤ちゃんの写真を最初にお見せしたのでしょうか。

大学院生活と赤ん坊、一見何の繋がりもないですね。
しかし、この赤ちゃん、そして彼女の母親との出会いが筆者の人生観、自分との向き合い方を大きく変えていくきっかけとなりました。


高学歴女子が出世コースを外れる。漠然とした不安の日々

©flickr / Marius Boatca title: LV woman

©flickr / Marius Boatca title: LV woman

かつての学び舎は、国立大学法人 神戸大学。
国立大学にストレートで入学、在学中は文武ともに同校から表彰されるという優等生ぶり。
世間でいう、エリートコースにいたわけです。

そんな青春を謳歌していた筆者の現在は、ハンガリーで悪戦苦闘中のアラサーです。

日本にいた頃は、教育に関わる仕事を志望。
そんな時、ある一冊の本と巡り合いました。
それが、日本を代表するジャーナリスト池上彰さんの著書「突破する教育――世界の現場から、日本へのヒント」でした。

本について語りだすと止まらないので割愛します。
兎にも角にも、大学で世界を繋ぐコミュニケーション、メディアの勉強がしたい、そう強く思い始めたのが数年前。
やっぱりその気持ちが捨てきれず、3 年前に留学の準備を始めたわけですが、「出世コースからはずれる」という根拠のない漠然とした不安に押しつぶされそうになる日々が続いていました。

出発前はキャリアに生きる友人たちを横目に、「学生に戻る」なんて恥ずかしくて胸を張って言えない自分がそこにあったのは事実です。
周囲が、大手企業に就職したり、起業したり、社会の中心で活躍し続けている姿を誇らしく思う一方、「私は社会のために何ができているのだろう?」と落ち込むことがよくありました。
自分が前向きに選んだはずの道の途中で、高学歴女子のプライドがズタズタに引き裂かれていきました。

しかし留学後、ハンガリーの大学院で様々な人たちと関わり合っていく中で、「大学で勉強しています」と堂々と言える自分になっていることに気づいたのです。
何が筆者をそうさせたのでしょうか。

今でもこの学生生活は人生の価値観を変えてくれた貴重な時間だったと感じています。
前置きが長くなりましたが、これから少しばかり筆者の考えを変えた人生ストーリーにお付き合いください。


稼ぐことだけじゃない、学ぶことも社会貢献の一つのカタチ

©2017FinoMagazin Photo by Yuri

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同級生は多国籍で、年齢も様々。
大学を卒業したあと社会に出て、仕事をしながらキャリアアップのために大学院へ通い始めた 20代後半の女性。
転職のために大学院へ戻ってきた中年男性などなど、本当に生活環境や職業も彩り豊かなクラスでした。

日本にいたら、「仕事と両立できるの?」「生活費はどうするの?」「卒業後は、どうするの?」というような質問攻めに合いそうですね。
確かに未来への見えない不安は、皆持っています。

しかし、ここハンガリーではそのような質問は筆者や彼らに向けられません。
勉強に励むこと自体が、社会貢献の一つだという見方があるからなのです。

仕事をフルタイムから大学院の授業に合わせてパートタイムに切り替えてもらったという同級生。
常勤は変わらず、学生という扱いで賃金を下げる変わりに授業の時間に職場を抜けて大学へくるという仲間もいました。
確かに、本人にとってもかなり過酷なスケジュールになるので、それなりの覚悟がないと両立は難しいです。
会社や組織によっても対応は様々ですが、家族を含む社会全体が学業に励むことに対して寛大であるようです。

ハンガリーでは、成績が良ければ大学まで無償で通うことができます。
さらに、大学卒業までの通算成績が優秀であれば大学院まで学費免除になるそうです。
政府の援助を受けて大学院を卒業した学生は、ハンガリー国内で一定期間働くことが義務付けられています。
勉強したことを国に還元する、この仕組みは未来への投資のようですね。

日本では、卒業後の奨学金返済が深刻な社会問題化しています。
改善に向けて取り組み途中ではありますが、「学びたい人は、たくさん学んでいい、それが社会貢献の一つのカタチ」そういう考え方はまだ少数派な気がします。


ハンガリーの大学教員は、女性の方が多数派!?

©flickr Sam Churchill AW9FYG

©flickr Sam Churchill title: AW9FYG

さらに大学生活でカルチャーショック?だったのは、大学教員の半数以上が女性だったということ。
かなり多くの授業を受けましたが、男性教員は数えらえる程度しか出会いませんでした。
分野の違いも女性教員数に影響がありますが、かなり衝撃的だったことを今でも鮮明に覚えています。

日本では、2020 年までに指導的地位に女性が占める割合を 30 %にすることを目標に掲げているので、この現状に驚くばかりでした。
実際に、内閣府男女共同参画局が公表している国際比較データ※では、企業などの役員会の女性比率が日本の 10 倍以上となっているハンガリー

※データは平成 23 年 3 月時点のもの。

北欧諸国についでヨーロッパの小国ハンガリーは、女性の社会進出で世界の上位にランクインしているのです。
実際に周囲を見渡してみると家庭とキャリアを両立させるというのが当然のように感じてしまうほど、この国はパワフルな女性たちで溢れています。

その中でも一際輝く一人のハンガリー人女性がいました。
それが、最初に登場した赤ちゃんの母親であり、筆者がこの国で初めてできた親友と呼べる友。


子を持つ “バリキャリ女性” が考えた育休中にできること

©2017FinoMagazin photo by Yuri1

©2017FinoMagazin Photo by Yuri

友人は、世界的な某機関で働くバリバリのキャリアウーマンであり、一児の母。(以下、A 子)
そんな超多忙なはずの A 子が大学院進学を決めた理由もまたすごい。
「育休中だから、その間にスキルアップして仕事復帰したい」、それが進学の理由です。
当時の筆者にはこのような発想が皆無だったので、かなりビックリでしたね。

A 子の家族の支えがあってこそ育児と学業の両立ができるのですが、生まれたばかりの子どもを抱えているとは思えないほど超活動的。
そんなキラキラ輝く彼女に、同じ女性として惹かれるものがありました。

もちろん、順風満帆に見える A 子にも悩みはたくさん。
授乳期間中は授業であろうと赤ちゃんは待ってくれません。
保育園に預けたくても日本同様、待機児童問題は残っており、最初の 1 年ちょっとの間は彼女の家族が交代で赤ん坊の世話をしていました。
時には、看てくれる人がいなくて子ども同伴で大学にくることも。

そこでまた驚きだったのが、大学教員たちは子どもが授業に参加していても全く動じない、寧ろ親である学生が肩身の狭い思いをしないよう、笑顔で受け入れていたということです。
この対応は女性教員に限らず、男性教員も同じでした。

また構内には、赤ちゃんのおむつ変えスペースが設置されているお手洗いもあります。
大学という小さな社会ではありますが、A 子と過ごす日々の中で、子を持つ親を支えるハンガリーの基盤となる人生のとらえ方を垣間見るきっかけとなりました。
今でも A 子とは、プライベートやキャリアについて相談し合える良き友です。


積極的な人生の選択をした一家の大黒柱との出会い

©flickr / Damián Bakarcic title: Father & Daughter

©flickr / Damián Bakarcic title: Father & Daughter

では最後に、高職歴のキャリアを捨てて大学院生になった 30 代後半の男性 B 男のお話。
B 男は、妻と3 人の小さな息子たちを連れてブダペストに移住しました。

彼のパートナーは、出産したばかりなので今は家で育児に専念しています。
ということは、ほぼ無収入、貯金を切り崩しての生活なのです。
幼い子どもがいるのにどうして今学業 … ? そう思ってしまいますよね。

彼自身も一家の大黒柱としての不安はあります。
しかし今の彼にとって、「家族の幸せ」と「自分の幸せ」とのバランスを調節する大切な時期なんだそう。
妻や子どもたちの幸せは?と考えてしまいそうなところですが、彼の妻と最初に会った時、興味深いことを耳にしました。

「実際に大学には通っていないけれど、私も子どもたちも留学しているみたいで楽しいわ。」と B 男妻は笑顔で言うのです。
それは見栄や強がりから発せられた言葉ではありません。
ただ夫についてきただけでなく家族自身も積極的に人生を楽しんでいる、そう感じさせるものでした。


逃げではない、恥でもない、役に立つのです

©2017FinoMagazin Photo by Yuri

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ハンガリーの実情は、まだまだいいことばかりではありません。
しかし、そこにあったのは家族や自分自身にあったライフスタイル選び、その選択を互いに尊重し合う社会

高学歴、高職歴は将来において一つの武器になり得るのですが、時に不必要なプライドが邪魔をしてし道を狭めてしまうこともあります。
「社会から認められるように〇〇であり続けなければならない」と自分で自分を型にはめてしまったり…。
筆者もそのうちの一人だったと言えます。

Szégyen a futás de hasznos ( セージェン ア フターシュ デ ハスノシュ ) 、これはハンガリーの諺です。
日本語訳は「逃げるは恥だが役に立つ」。
このフレーズは、読者の皆様の記憶にも新しいのではないでしょうか。
ハンガリーの諺が、日本社会に一大ブームを巻き起こしたドラマのタイトルになっていたのです。

ハンガリーに来て以来、自分自身の生き方を変えていくことは、恥ではなく人生の役に立つこと、そう思えるようになりました。
アラサー女子にはまだ人生を語るほどの経験値はありませんが、人生は想像しているよりもう少し柔軟なのかもしれないとハンガリーという環境が教えてくれたのです。

皆さんが人生の分岐点に立った時、何を優先し、どんな選択をしますか?

生き方を変えることで、今までになかった困難にぶつかるかもしれません。
それでも、その選択が自分自身を人生と積極的に向き合わせてくれるきっかけになると信じていきたいですね。
筆者もまだ模索の日々ですが、自分の社会貢献のカタチを前向きにさぐっていきたいと思います。


現地発情報ウェブメディアだからこお届けできる、ありのままのハンガリー。
この国のリアルな現状、リアルな魅力を FinoMagazin ( フィノマガジン )で掲載していますので、引き続き、どうぞお楽しみください ♪


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大阪生まれの大阪育ち。神戸大学で人間行動学を専攻。中学校・高等学校1種免許(保健体育)、小学校専修免許状を所持し、子どものスポーツ教育に従事。その後、ハンガリーへ渡りブダペスト メトロポリタン大学大学院でメディアコミュニケーション学を学ぶ。現在もブダペスト在住。FinoMagazinライターの傍ら、ロケーションコーディネーター、ウエディングフォトプランナーとしても活動中。ハンガリー情報はお任せあれ。英語、ドイツ語もOK!! 日本拳法で全国制覇の経験もあり、心身の強さには自信アリ。知力・体力を磨いて、世界の現場から日本の教育にアイデアを届けることをモットーに、様々な分野で執筆に励む。

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